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自分を好きでいられる意思決定

私は今、奇跡的なバランスで経営を続けられている。

多分、何か一つでも欠けてしまったら、結構やばいと思う。
奇跡的なバランスを前提として、一つ、また一つ「もしかしたらやばいかもしれない意思決定」を、一刻を争うかのように推進する。

もしかしたらどこかで躓くかもしれないのに。


この奇跡の連続の中で、さらなる奇跡を起こすために今自分が考えていることをまとめていこうと思う。

 

 

 

 

 

 

二期目の業績は先期比で232%となった。
500%以上を目指していた計画と比較して、とんでもないビハインドをしてしまった。
累損が割に増えた。2期目時点での自己資本比率は、マイナスである。俗にいう債務超過というやつだ。
それでも会社は潰れない。バランスさえ保っていれば。

これはひとえに自分の経営力不足だろう。1年間という時間軸と、自分達の現在の能力値を過大に評価してしまっていた。

しかし、得るものも多かった。今の自分の手触り感のある事業計画には本当に、積極的な意思決定を可能にさせてくれていると思う。

事業計画を現実味のある数値に落とすのは簡単だ。しかし、マーケットのリアリティを反映していない計画は、本当にただの絵に描いた餅でしかない。ところが、絵に餅を描かないと、なにも始まらない。

餅は描き続けるべきだ。いつか食べられる日が来ると信じて。

 

 

単月の黒字化を達成したのは9月に入ってからのことだった。そこから、1期目2期目でブーストをかけてしまった(下手な意思決定をしてしまった)支出が徐々に収まり、損益分岐点を超えることになった。

 

支出をしなければ売上は増加できない。ただその支出が本当に売上を上げるものかどうかはわからない。それは永遠にそうなので、覚えておくべきだと思う。また、その蓋然性こそが経営力なのだ。

お金は減らすより使う方が難しい。

 

現状の資金繰りでいえば、ひとまず会社は死なない。
当然利益額の最大化を目的に動いており、業績は順調にもかかわらず、いくつかのビジネスモデル変更に着手した。その意思決定もまた、いくつかの葛藤と、いくつかの条件が複合して、ある意味背中を押されるように、あるいは、崖から突き落とされるかのように行なっていったものだった。

 

ただし、その意思決定が成立する条件が満たされた最大の要因は、奇跡的な採用状況と、配置転換の賜物だ。もし、このタイミングでこの人が入社していなかったら、おそらく今のフォーメーションは実現できなかっただろう、といったように。

 

今の見通しを支えているのは、奇跡的なチームに恵まれているからに他ならない。

 

自分達のビジネスモデルが成立する諸条件はいくつかのケーパビリティを複合的に備えている、創業フェーズの会社だったからとも言えるだろう。
1期目から営業の会社であるべきという意思決定は、2期目で舐めた辛酸のあとに、大きく跳ね返って資産となっている。
同様に、webのケーパビリティと、実現可能性の見通しが立つようになったのも、相当にでかい。ひとえに、キャッチアップの早いメンバーに報われているからだと本当に思う。

営業・広告・SEO・デザイン・開発・UIUX・・・

自分が経験してきたもののうちの、まだ経験していないものも含めて、各業務の担当者が大まかに決まることで、非連続な成長を実現するかもしれないビジネスモデルが企画された。

 

その新しいビジネスモデルの検証は順調で、今後も引き続き検証を行なっていくことになるが、組織の課題はどちらかというと実行力に移ってきている。さらに言えば、採用である。

 

先期までのビジネスモデルは、線形に労働集約的に伸びていくモデルだった。
このモデルは踏襲しながらも、業績の急成長を追うハコとして認識することを止めた。
理由は、拡大の実現性が低いとみなしたから。
自分が想定しているよりもはるかに、ビジネスとして成立しなければならない条件が厳しかった。この厳しい状況の中で採用をするか、しないか。採用がボトルネックになることで事業停滞が起きる問題をどう解決するか。

これが10月以降の自分に課されたミッションだった。


1.収穫逓増のモデルにチェンジするために必要な条件を整え、そのモデル自体が損益分岐するまで、労働集約的な、線形的なビジネスでキャッシュフローを回すという形に切り替える。

2.いくつかの事業の箱を用意して、そのそれぞれのビジネスモデルを組み合わせることで、リスクを下げていく。

3.ストックビジネスで底堅く利益を生み出し、余剰利益でCCCをマイナスにし、経営を安定させた上で、大胆な投資を繰り広げていく。

こういったプランニングがいったんの実現性を以って結実しそうな渦中に到達した。

 

そうすることで、今の自分が追うべき指標は自己資本比率となった。もっと言えば利益剰余金だ。BSを見るのはそう難しいことではない。それを使うのが難しいのであって。

当然期待値で考える。3~10期の間は50%を上回った際にギアリングしていくことを想定している。CCCの差額が存在しているため、40%でもいいかもしれないが、このあたりはまだ計算が済んでいない。いずれにせよ、再投資には積極的になれる。

また、残念ながら法人税が安い。もともとは40%の時代があったため、世の中の中小企業は内部留保を怠ってきたのだろう。今の法人税なら比較的内部留保しやすいと言って良い。

 

財務基盤の強化に対してとるべき打ち手は取っているが、結果として跳ね返るまでに時間がかかっている。今期中に自己資本比率を40~60%に持っていけるといい。あとから自己資本比率を改善するのは難しいだろう。

おおよその純利と営利のマネジメントラインをこしらえて、あとはその計画に従って事業KPIを推進し、ビハインドを潰していく作業となった。収穫逓増のモデルであれば、人を増やしていくということに積極的にならなくてもいいし、1人あたり利益が改善されれば、優秀な人材の中途採用もしやすくなる。各箱が赤字にならないように設計されていれば、リスク分散がされているし、それぞれの利益が最大化された際には、再投資先を臨機応変に切り替えていくことができるし、そのROIを割り出していけばよい。

 

あと少しで過酷な状況を抜けられる、一息つける段階までようやくきたといっていい。幸い、日本で最も大きいマーケットにセグメントをかけてビジネスを推進することができている。もし今自分達が描いていることが、本当に実現してしまったら、とんでもないことになるかもしれない。そんな淡い期待感を抱きながら。

 

二期目の通期赤字の主な要因は家賃比率が高いことだ。これは想定される売上を結実させることができなかった結果として積み上げてしまった費用とも言える。
馬鹿なのか、三期目もまた家賃比率が高い。これは将来的な売上を信じて起こしているが、2期目と比較して、売上の実現性が明らかになっているという信頼と、それによる赤字転落がないことが確かめられたので、かなりクイックに意思決定した。今期は変動費ではなく、固定費としてみなすことになった。




会社の利益がでるにつれて、生み出た利益をどこに使うのかについて、真剣に考えるようになる。事業の見通しがぐらつく可能性がある中で、自分がとった方法は、
「思いっきり任せる」ということだった。
これを漢気バトルと呼んでいるが、何が起きても、客観的に見て裏切られていると思われるようなことがあったとしても、自分は一生このやり方を変えないことを決めた。

信じて任せることの難しさは、扱える資金繰りの余力によって決まると思う。
資金繰りに余裕が出れば出るほど、信じて任せる決断をとりやすくなる。
自分が財務基盤を強化していく中で得たものの一番大きなところは、そういったところだと実感している。何が起きても動じない精神力。何が起きても対処できる自信と底力。その経験から裏打ちされた安心感を、人の可能性にフルベットする。
そういう目に見えないマインドセットこそが、本当の意味での経営力なのだと思う。自分は、それをしたいと思う。

また、これからの意思決定を「自分を好きでいられる意思決定」と「自分が好きでいられなくなる意思決定」とに分けることにした。

好きでいられる意思決定をとり続けているうちは、経営者冥利に尽きる生き方ができていると信じている。これからも、好きで居続けられると思う。