世界の輪郭に溶ける

社会とうまく馴染める距離を探しています

ボドゲの能力とビジネス能力は比例している

 

 

6月某日

 

シェアハウスで3人で住むようになってから、帰宅後にはボードゲームをやるのが日課になってしまった。1時に帰宅してから3ゲームをすると2時半にはなってしまうので、今日も寝不足だ。

僕たちはおそらく一般的ではない方法でカタンをプレイしていると思う。

僕たちは盤面と出目が決まった段階で、「どこに置いたらどんな戦略になるか」を3面配置の期待値が高い順に全員で考察している。次に、「1番目のプレイヤーが置いた場所に対して2番手が取るべき戦略はなにか」を考察する。2番手は3番手の置き方を想定した上で、3番手が置きにくくなるような場所に配置しつつも、1番手よりも有利に置く必要があるため、勝率は1番よりも高めだが、もっとも難しい順番であると考えている。3番手は自分の戦略をもっとも色濃く反映させられることに加え、1番手と2番手の戦略を配置から推察し、差別化を測ることができる。その時点でもっとも有利なので、僕たちの中では3番手がもっとも勝率が高くなる。

今僕たちが取り組んでいるテーマは「1番手がいかに勝つか」であって、現状パターンでいうと「最も重要な拠点を持てることを活かした最大交易×最大騎士力の早期獲得」が1つの解となってきた。もう一つは「港の活用検討」で、2:1拠点の2面から資源が算出されるところの期待値が高いところは相当強いことが確認できつつある。

戦略の大筋は「最大交易の獲得」か「最大騎士力の獲得」の2つであって、この二つのうちのどちらかもしくは両方を獲得できないと勝利することは相当難しい。そのため、最初の拠点配置では、大雑把に、「発展野郎ゲー」にするか「交易路伸ばし野郎」になるかのどっちかである。現状でいうと「発展野郎ゲー」をした方が勝率が高い。理由は「交易伸ばし野郎」は盗賊の対処ができないので、妨害を直に喰らいやすいこと。開拓地と道を序盤から伸ばしまくれるので、初速がよく、勝っているように見えやすいのだが、だいたい都市化に苦戦するのである。3:1港や2:1港がなければ岩麦の枯渇が目に見えており、開拓地を無思考に置きすぎると6点から先で失速する。


対する発展野郎は騎士カードを持ちやすいので、攻防両立しながらポイントを積むことができる。さらに発展野郎ゲーにすると岩と麦が出やすくなるので、都市化が捗る。都市化は期待値の高い初期拠点を強化することができるので、最も合理的だ。
最初の拠点2つを都市化し、最大騎士力を獲得するだけで6点となるので、残りの勝利点は開拓地を作って都市化するか、勝利ポイントを引くかで簡単に10点を獲得することができる。騎士カードを湯水のように使うことで、木や土の獲得は可能だし、最初の拠点からの道の伸ばし方をミスらなければ、木と土は2つずつ獲得するだけで済む。独占カードを岩算出枚数に合わせて使用すれば、ほぼ勝ちが確定したと言ってもいい。マーケティングでいえば独占カードはTVCM相当の効力を発揮する。


この基本戦略に加えて「港戦術」「都市化戦術」などを組み合わせることで勝利点を増やしていくのだが、初期配置のタイミングでそれぞれの戦略の方向性を見定めた上で、お互いがどこでどう戦うのかをその上で考察する。


勝利に重要なのは、初期戦略を定めたらその戦略を途中でブラさないことだった。最大交易戦略から最大騎士力戦略に方針転換しようとすると、大抵うまくいかない。最大交易と最大騎士力の両方が獲得できるパターンは、今の観測範囲では街道建設によって最短で5本にする場合だけだった。

 

そして僕たちが最も時間をかけるのは感想戦で、それぞれの戦術実行の意図や、勝因敗因の分析、勝てなかった人たちはどうしたら勝てたのかをシミュレーションする。

これを繰り返していくことで、少しでもカタンでの勝率を高めていくための改善に努めている。

 

 

 

 

 

カタンはとても良いゲームだと思う。ビジネス上の優秀さとおよそ比例するのではないかと思うほど、ゲームを繰り返していく中でどう学び、次に生かすかの見立てて検証して振り返るという基礎的なサイクルから、どれだけ学びとれるかの総量を高めるための工夫ができているかが問われている。さらに、交渉や結託のセンスが問われる。相手の状態を勘案した上で、提供価値を明確にし、相手に理がある形で交渉できる筋があるかどうかまで、最初の盤面で考察する。これはいわばアライアンスだ。そして、戦略策定能力の高い人間が勝利する。

とは言ったものの、もう少し正確にいえば、僕たちがカタンをそういうものとして捉え直していると言った方が良い。初期配置から市場特性を掴み、どういう戦いになるかを予想した上で、取るべき戦略を決める。僕たちがカタンで行なっていることと同じことを、一流の経営者たちがまるでカタンのように実社会で行なうことができているとしたら、僕たちは危機的だ。だからこそ、最低限カタンで見えているレベルまで、実ビジネスでも見通すだけの力が欲しいと今は思う。そういうシミュレーションのもと行う本気のカタンは、とても実りがあって、面白い。

 

 

 

 

・・・偉そうに書いたものの、我が家で最もカタンが強いのは下田で、僕は毎日反省会ばかりである。どうやら僕は、ブルーオーシャン戦略や独占は得意なのだが、競争戦略は得意としないらしい。