世界の輪郭に溶ける

社会とうまく馴染める距離を探しています

とある零細企業のコロナ禍における社長としての意思決定

5月1日に、新しいサービスをリリースした。
すぐに転職ができるオンライン完結のエージェントサービス。
この情勢の中では、「黒字化して決算をしめるには」ではなく、「自分たちが生き残るにはどうしたら良いか」が最優先事項になっていた。そのため、当初想定していたバーティカル領域からピボットし、今回のサービスを企画し、2~3日後には集客を開始した。

 

コロナ禍の中で、時流を捉えたのもあって、登録者が止まらない状況が続いていて、
現場二人の弊社ではとても捌き切れないほどの方々が、次の仕事をすぐに見つけるために、行列をなしている状態になった。

 

PRも想定を上回る速度で拡散されていった。時たまネガティブな引用リツイートが見つかったりもするが、同業者の恨みを買っているのだろう。

prtimes.jp

 

 

今回スグキャリをリリースするに至った背景を書く。

 

 

まず一個目は、初期仮説の事業進捗がまるで進まないということ。
元々は不動産管理領域周辺の人材紹介を行う予定だった。これは「PMF確立までの強固なキャッシュフロー構築」かつ「顧客接点の獲得」かつ「業界構造の理解」という、エスエムエスマフィア御用達の登り方だ。福岡に遥々旅行しにいったのは、要するにそういうことである。

 


4月より求人票集めの準備に取り掛かっていた頃、コロナの影響と、自身の営業能力の欠如によって、そもそも求人開拓が難しい状況だった。

不慣れなテレアポでの求人獲得率はそんなに悪くはなかったのだが、
そもそもコロナで採用をストップしている企業、テレワークで人事不在、新規営業お断りといった状況。
さらに、今の状況でも採用活動を緩めていない企業というのは、
紹介を希望する採用要件が厳しく、現状集客できている求職者の方とのミスマッチがギャップとして大きな壁となった。

 

そこで、再度STPを見直すことにした。この調子で活動を続けた時、売上が立つのは一体いつなんだろうと。

想定していたマーケットサイズは、職種に限定すると小さかったが、業界に広げると収益化には問題なかった。
集客自体もそこまで問題ではなかったのだが、やはり営業力=実行力=相田の確動性の低さが課題になってきた。

 

最短での単月黒字化が経営アジェンダだった。今のままでやっているとジリ貧になってしまうので、どうにかしてやり方を工夫しないと死ぬっていう状況の中で、
求人データベースを活用してCA業務に振り切った方が、自分たちのケーパを活かした事業拡大ができて良い。

という結論に至った。

 

もう一つ。
うちの姉から、「コロナの状況についてどう思う!」というラインがいきなり飛んできた。げぇ〜っと思った。もしかしたら、社会はもうすでにヤバイ状況になっているのではないかと思ったからだ。美容業界で働いてる姉は、案の定「このままだと最悪4月の給料が支払われないかもしれない」と言った。

 

最初は軽い気持ちで検討していたのだが、だんだんとコロナ状況のヤバさを、身近な人に影響がでていることからリアリティを持ちはじめてきたのだ。

 

そんな折に、前回書いたブログの内容がフラッシュバックしてきて、
なにかこう、自分の中で「これは絶対にやった方がいい・・」と確信に至って、
夕方鬱々としたベッド篭りから飛び起きて、共同創業者に、「これをやるぞ!」と力強く意思決定した。

 

まずなんとしても避けなければならないのは、3ヶ月後に起こり得る大量の失業者がクラスターを生み出してしまうことだ。
営業活動停止によって不動産家賃が支払うことができず、住む家を失ってしまった人たちは、前回のように集団生活に移行することはできないだろう。本当に感染を防ぎたいのであれば、国民の住居を補償する必要がある。

そのためには月々の経済補償が必要で、そのための給付金はマスト。じゃあ仮に国民全体に10万円を配ったとしたら、10兆の財源が必要になる。確か50兆程度の財源確保は可能だが、100兆規模は今の日本の財政状況だととても対応仕切れない。つまり、2ヶ月後に倒産するみたいな状態だ。

 

このままの調子でいくと、7月から8月のいずれかに大量の失業者がクラスターを生み出すというエックスデーが起こりかねない。それを少しでも避けなければ国家として10年、衰退し続ける。WWⅢを除いて、それがワーストシナリオだ。

 

自分なりの見解としては、「政府紙幣か国債発行で補助金を大量にばらまく」×「生活必需品については価格統制」として、社会変革に踏み込むのが取れる最善なんだろうと思っているが、おそらくそれは実現しない。今の社会に蔓延る相互監視と同調圧力による全体主義国家がすでに成立しているからだ。1984で描かれたディストピア世界は、皮肉なことに、資本主義国家でも同様に、インターネットを媒介に実現してしまったようだ。つまり、お上は「そんなことをしなくても、下々は互いに不幸になりたがる」ということをどうやら理解されているらしいので、社会が幸福になる方に舵を切るよりも、この格差を維持したほうが自分たちの儲けがでかい。ということだ。

 

 

ソ連崩壊の際に起きた、オリガーキー達による政治腐敗は、もう日本でもすでに実現しているといって良い。このままデフォルトが起きるとは考えにくいが、おそらく日本が先進国に戻ることは難しいだろう。僕は、日本が戦争に負けた時から、この未来はいずれ訪れるものだというインサイトを持ってしまった。ここに抗うというのは、日本や世界における侵略の歴史と闘う・あるいは弱肉強食という自然摂理から解脱するということに他ならず、新安保法案の際の学生運動、世界各国で起きた革命のその後の歴史をみるに、どうやら僕たちがどうにかできる問題を遥かに超えてしまっているというふうに考えざるを得ない。石原莞爾の言った世界最終戦争論という予言は、もしかしたら部分的に正しかったのかもしれない。

 

 

もし仮に、8月までにコロナが収束したとしても、その爪痕は5年は長く響くだろう。リーマンショックよりも実体経済に影響がある点、アジア圏のみ経済回復しても、欧米地域では依然、コロナの影響が残り続ける点を考えると、5年というスパンですらも短いかもしれない。シーレーンの問題で米中露が揉めているのも相まって、もしかしたら世界はもっとやばい方向に向かっている可能性だって否定できない。

 

 

そんな状況の中で、自分たちの初期戦略にこだわる必要性はまるでなかった。

社会のためにどうするかをベースに、自分たちにできることを粛々とやったほうがいいのだという閃きが舞い降りたので、なんとしてもスグキャリを少なくとも5年は続けられるよう、かつより多くの人がなんとかなるように頑張っていきたいと思った。 

 

 

 

 

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余談だが、

今回スグキャリの概念を発明した時に、学んだことを、メモ書き程度に残しておきたい。

僕が疑問に思ったのは、「なぜスグに転職ができる」ということが今までコアバリューとされるサービスはなかったのか。

ビジネス都合で言えば、(表現はすこぶる悪いが)在庫の歩留まりが解消されて、キャッシュフローが改善されて、オペレーションが最適化されていくと提供価値があがっていくはずだ。それ自体はどこでもやっていることだし、今回オンライン完結といっているが、それ自体もすでに、各エージェントでもやっているような内容だろう。

 

おそらく今までのパラダイムでは「利益率を高めるためにハイキャリをマッチングしたほうがいい」という力学だったのだと思う。年収600万円の人であれば、180万円程度、年収300万円の人の3~4人分といったところだ。

 

だけどハイキャリの内定率がそこまで高くなかったとした場合。
例えば5%だった場合、20の求職者対応が必要になる。
内定率が仮に50%だった場合、8人で済む。

今のこの状況で内定率が50%を超えることはまずないだろうが、
ハイキャリ経験のある独立エージェントが、今までのやり方に固執して思ったように成果が上がらない状態になっている可能性はかなり高い。

 

裏側のオペレーション工数を見立てることはできないが、確かに利益率を追っていくのであればハイキャリに群がるのはわかる。ローキャリを募集している企業はそもそも採用予算を確保することができていないことも往々にしてあるし、単価の高い人材紹介を使うのはおそらく難しいのだろう。求人広告よりも採用予算を組みやすいという点で魅力的だと思うのだが。

 

今後、人材業界でどのモデルが潮流になっていくかは正直わからないが、
求人広告の採用単価>=人材紹介の採用単価 が部分的に実現するような業界・職種・セグメントが発生したとしてもおかしくはない。具体的には新卒・第二新卒になるのか、建設になるのか・・・

 

市場自体も成長している業界なので、ひとまずこのコロナ禍を乗り越えた時にボーナスポイントがあるのかもしれない。それが来年、再来年になればベストだが。。

 

 

いずれにせよ、人材業界は不況により、変化に対応できないところは人件費が固定費として重くのしかかり、存続が怪しくなることもあるだろう。
一方の我々はバーンレートがかなり低いので、しぶとく生き残ることができるかもしれない。パラダイムの変化がしっかりと起き、その潮流を逃さなければ、一気に突き抜ける可能性もある。

 

ただ、この調子で爆発的な買い手市場が長く続いた場合、辛く険しい冬の時代の中、低利益率の状態で耐え忍ばざるを得ないことだって起こり得る。幸いなことに、売り手市場の楽さを知らない我々は、この地の底から経験学習をしていくことで、亀仙人の甲羅を背負ったまま修行をしたサイヤ人のような状態になりえるかもしれない。

それでも、やっていくことは変わらないはずだ。

 

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最後になるが、 

今回の自分は、様々な困難にぶち当たることで、自身の意思決定能力を高めていくことができたのだと思う。

 

困難に打ち当たらず、そのままのらりくらり進んでしまっていた時のことと、いまの状況を比較して、

「どうして自分はもっと早くこの意思決定を取らなかったのか」ということを考えていたのだが、そのことを同居人に相談してみると、「むしろ、どうして今この意思決定ができたのかについて考えた方が学びがありそう」と言ってくれた。

 

自分がしていたことを振り返ってみると、ビジョンミッションに照らし合わせながら、今後起こりうるシナリオをパターン化して、それぞれが起きた場合のアクションプランをしたためるという進め方をしているだけだったと思う。

 

なんとなく、それを「戦略性があるから」と片付けてしまうのはもったいないような気がしている。

困難に陥った時、意思決定に大きく影響するのは「今までどうやって生きてきたのか」に尽きるんじゃないか。

 

「思想」や「人のために生きる」といったことを10年以上磨き続けてきて、それが今回の結果につながっているといったほうが、自分としては納得感がある。

加えて、4年前から思考の柔軟性をあげていくことに意識して取り組んできたのもあって、
意思決定ミスに陥る認知バイアスを取り除くことができつつあるのかもしれない。

 

つまりこれからの僕というのは、2016年までに生み出してきた僕という玉鋼を柔らかく、しなやかに美しくしていく為に、何回も、何十回も信じ、疑うプロセスを繰り返していく必要がある。そうして出来上がった、決してブレないが、しかし柔軟な自分が成し遂げることとその可能性に希望を見出したい。大きなことを成し遂げるためには、どうやらそういう人間にならないといけないらしい。

答えを出すというのは疑いうるものを信じることによって達成される。しかしそれはあくまで暫定解にしか過ぎないことを心に留めておく必要がある。そうでないと傲慢であるし、朝令暮改を繰り返すと信用も失ってしまう。だがしかしこの営みは全ての人間に必要かと言われると、僕は必ずしもそうは思わない。それが出来る人に任せてしまっても良いのではないか?と思う。
ではそれが出来る人の宿命はなんなのか。僕という人間はもしかしたら、この問いに答えていくことを必要としているのかもしれない。

 

 

 

この社会を少しでもお金がなくても豊かになれる状態に近づけていくことをビジョンに、

僕たちは全ての労働者に優しくありたいという気持ちと、
自分たちが常に労働者側であり続けたいという気持ちから、
プロレという名前を会社につけることにした。

 

自分が今までどうやって生きてきたのか、どうして今この選択を続けているのかについては、また別の機会にまとめさせていただくとして、

 

今はとにかく、新サービスのスグキャリが人手不足により求職者を支援できないオソキャリになってしまうことをなんとしても避けたい。

 

正直に言えば、スグキャリのコンセプト的には、コロナ収束とともにクローズしてしまったほうがいいと思う。それができるかどうかは、今後の社会情勢と相談しながら進めていくこととしたい。

 

そんな私たちのことを手伝ってくれる人がいるなら、
最後まで読んでくれた人がいるなら、
気軽に僕のアドレスに連絡してほしい。

 

ryuichi.aida@prole.co.jp