世界の輪郭に溶ける

社会とうまく馴染める距離を探しています

会社設立してから1ヶ月経った

 会社を作ってから1ヶ月経った。
免許交付のための手続きが先日無事に受理されたので、これまでに考えてきたことをそろそろ棚卸ししたくなってきた。備忘録を記載していく。また、最近考えていることをアウトプットしておきたい。

 

やっていることはただひたすら事業開始までのクリティカルパスを最短で走ることだけで、それに関して言えば順調に推移できたと思う。2月に入ってからは1月にダラダラしたツケのおかげで一人ストレッチオペレーションのタイムラインだったが。


一方、反省しなければならない点もいくつかでてきた。人によっては大したことない内容かもしれないけど、後になって「こうすればよかった」が発生するということは「その時点での検討不足」があったというふうに捉えている。僕に関して言えば、その要因を振り返っていくと「思考をサボって招いた熟慮不足」がその理由になっていることが多い。なので、その最速で検討をしながら手戻りがないように進むことをもう少しリキみながらやるべきだし、その能力はその積み上げでしか養われないので、頑張って行きたいと思う。

 

 

1月某日

 

12月〜年末にかけて、有給消化を活用して増資のための資金調達に奔走していた。奔走と言っても、ドサ回りではまったくなかったので、大したもんじゃないと思う。初めてのことでいろいろよくわからないことだらけだったが、納得の行く形で着地することができたと思う。
ただ、このときに考えていた初期仮説はよく外した。そこから、「自分たちが思ってる仮説は大体外れるもんだ」と気を新たにした。とはいえ、僕は「外したときの対応まで見越して検討するタイプ(本来当たり前なんだけど)」なので、だめだったときのオプションは常に持ち歩くことができた。
その後は登記申請であったり、初めての投資契約の確認であったり。

投資契約のくだりのおかげ(?)で、投資家との飲み会では「相田さんはめんどくさい笑」といわれてしまったが、その感想が出る理由は純真、本当に真っ当だからだと思って、逆に安心できた。

ただ、油断すると一人振り返り会が発生する。それ自体はあまり建設的ではないが、まあ、だいたいみんなそんな感じだろうと思う。
僕はやっぱり、「たられば」は必要悪だと思う。悲観的にも楽観的にもならず建設的に振り返り、次のアクションに活かしていくことを愚直にやっていけばいいの正論だ。だけど、その過程でグニグニしたっていいと思う。人間なんだから。

 

ファイナンスについては正直、11月からずっと検討をしていたのだが、事業開始のためには(負債ではない)資本がどうしても必要だった。なので今回の調達はその資本をどう賄うかについて。
この間に(サボって)徹底的に調べて学んだことの多くがその後のファイナンスリテラシーを底上げしていると思うので、割に良い。

 

この時期、僕が2週間をかけて (なんだったらその後も尾を引いていたと思うが)徹底的に悩んだことは、「果たして自分は自分の力で変わり続けることはできるだろうか?」ということと、「僕は本当はどうしたいのだろうか?」ということだった。2週間をかけて・・・というと短いように聞こえるかもしれないが、これらの問いは10年前からの延長線上にしかない。

特に、「果たして自分は自分の力で変わり続けることはできるだろうか?」の問いには本当に頭がちぎれるほど考え続けた。この問いは今もこれからも、重力のように僕の行動を規範していく。

 

 

僕の出した結論は、「こんだけ考え続けられる限り、僕は変わり続けられる」だった。
それは同時に、僕に対する僕からの約束でもある。

 

 

 

1月某日

 

12月から1月にかけて、もしかしたら僕はあまり人には言えないくらいの体たらくだったように思う。だけどそれは僕にとって必要だった。言い訳かもしれないが、長い時間をかけ、一つのことを複合的な視点から検討し続けた上で、避けて通れないトレードオフに腹をくくり行う意思決定は本当に大変だ。これがベテルギウス級の重量でのしかかってくることを考えると、気が重くなる。。

 

 

 

 

1月某日

 

重い腰をあげてノコノコ東京労働局に出向くと、1月中の書類審査にはどうやっても間に合わないことが明らかになり(増資の決算書に監査証明をつけなければならなかった)

2月末に受理をスケジュールに、再始動することとなった。

時間に余裕ができたので、偵察がてら、エージェントに登録をして面談を受けるなどしてきた。
割にいい経験を積んできたらしい。前職のときは「ここを辞めたら自分はいくところがないんだ!」と本気で思っていたが、どうやらそういうわけでもないみたいだ。

 

 

1月某日

 

それぞれの書類作成やオフィス契約、本店移転や増資後の登記など、周囲を見渡すと代理店を活用したり人を雇ったりしているみたいだが、僕はすべて「まずは自分で」で行いたかった。
理由は、「自分がハイパー各論者になることがリーダーシップにおいて重要な要件だと考えているから」だ。

これはバックオフィスに限らずフロントにも言えることなので、それ自体は当然やりきっていくスタンスだけど、バックオフィスは割に見逃されている気がする。間接部門は優先度が低いが、僕は逆に、自分がそこにハイパー詳しくなることを目指しているタイプだ。現状の複雑性でいえば、GKとDFは自分がやりつつ、FWは積極的に任せていくみたいなふるまいになる。

 

結局、できない人にやんややんや言われるのは割に腹が立つんですよ。これは僕がひねくれているからそう思うのかもしれないが。一方、中途半端にわかっているもそれはそれでだるい。

 この辺の塩梅はスキルの有無よりも、「この人に仕事を任せても安心だ」という信頼関係によってしか醸成されない。というふうに考えると僕の一番身につけるべきスキルは「仕事術」ということにもなってくる。いかに信頼関係を双方から築いていくか。
これを第一だとすると、ベースとなる仕事術は
「建設的な会話に必要なロジカルさ」と
「タスク消化の優先順位付けプロセスの適切さ」と
「納期厳守度」になろう。
考えてみれば、これは僕が新卒時代に上司から言われていたような内容だ。
これは部下としてはすごく理解しにくい問題だったのかもしれない。

 

 

 

2月某日

 

マネジメントの問題について、同居人の古澤と会話。
マネージャーの存在意義について、自分の考える方針を明らかにする必要を感じた。

例えばgoogleでは、マネージャーはマネージャーというロールであり、マネージャーというスペシャリティである。
日本ではマネージャー=役職者=出世 と捉える風潮があり、この概念に馴染みがない。

僕も同様に、マネジメント職には権限の委譲が行われるものだと認識していた。背景として、「異職種間での相互理解を促進するための仕組みを考えたい。マネジメント職には事業理解のための経験を積んでほしいと考える」という発言をしたからだ。


権限の委譲とマネージャーは明確に区別するべきかもしれない。
もしくはそれを兼任することを明確に示したほうがいいかもしれない。
マネージャーはあくまでプレイヤーの生産性を最大化するためのロールでしかないという認識の状態で、役職者のロールを意思決定の権限を委譲されている人間というふうにしていけたら良いと思う。

たとえば仮にプレイヤーに役職者のロールがついている状態があることはあるだろうかなどを考える。

割にワークしそう。面白いテーマである。

 

 

2月某日


一緒にやりたいと思っている同期にこんなことを言った。
「あなたにはきっと、これからも様々な機会に恵まれると思うし、その一つ一つは俺からみても素敵だと思う。でも、俺が共同創業者に対して考えているのと同じくらい、あなたのことを考えている。確信を持って言えるが、あなたのことを一番考えているのは間違いなく俺だと思ってる」

これはまじでそうで、どうやったらお互いがハッピーになるかということを突き詰め続けなければ、多分誰も幸せになれない。だから僕は多分ずっとこのスタンスでいるんだと思う。

この前起業家の同期に(彼はぼくよりも1年先輩だが、1人で粛々と事業を推進してきた)「巻き込み力が弱みになりそうだ」という相談を受けたときに
「これは絶対にわかりあえるけど、これはもう採用者側の覚悟の問題」と言った。
多分これは、巻き込むからには絶対に幸せにするという覚悟なんだと思う。

当然、僕という人間は一人しかいないので、一緒にやるメンバーにはみんな、そういうふうに思ってくれたら良いなと思う。

 

 

 

 

2月某日

 

組織文化の言語化をしていく必要性がでてきたので、公器として将来的に実現したいことと、その人材要件を考えていくと、リクルートロクヨンスキルに酷似してしまった。

なんべんも話している内容なのだが、僕は雇用-被雇用という関係値はできる限りなくなればいいと思っている。橘玲の言っているようなマイクロ法人を1世帯に1法人、こんな感じでもいいし、国民総自営業でもいいかもしれない。
そもそも日本社会の自営業者は10%前後の550万人弱だ。それに対して一部上場企業の従業員割合が300万人なので、どちらかと言えば自営業者のほうがマジョリティなのである。
僕たちは国内でも少数派の価値観に従って生活をしているということに気づかないままよくわからない社会のレールに従っているが、実態としてはそんなもんねーよっていう感じだ。
というふうに考えていくと、サラリーマンっていうのは実は割に合わないんじゃないか?と思い始める。
雇用されるということを選択して会社の持ち主からの指揮命令に従わないと業務不履行である。「やれ」といわれたことが嫌だったら辞めるしかない。辞めたくないんであれば、しぶしぶ我慢して働き、妻子のために田園調布の満員電車を耐え抜き、控除もろくにされない状態で高い税金を払って得られる特典は、せいぜい、住宅ローンが組めるとかそういう程度のものなのかもしれない。

 


一方、個人能力の限界を突破するためには組織しなければならない。できる限りこの雇用-被雇用の関係性に力の不均衡が発生しないような工夫をしたいのは、思想が染み付いていると言っても良い。

僕がこのように考えている以上、人材輩出の大義名分を余儀なくされる。
会社を伸ばした実績と経験と報酬を携えて、目指したい世界の重なる形でネットワークビジネスのように公器を増やしてくれたら良いんである。そう考えていくと、オーナーシップに溢れた(リクルートでは圧倒的当事者意識と呼ぶが)人材が緩衝しすぎずに能力を発揮できる環境を創るのが僕が今後、最も力を入れてやるべき仕事となる。 

リクルートが本当にすごかったのは、データ人材がこぞって一次情報を取りに行くことの重要性を理解して「営業同行にいかせてほしい」と言っていたところだ。
「そんなもん当たり前だ」と思っていた自分も外れ値なのかもしれないが、その環境が当たり前だったのは、実はとにかく色々すごかったのかもしれない。どこで見極めてどうやったら採用できるんだよ。

 

 

2月某日

 

投資家のお誘いで日本でもデカ目なVCの方とご飯会をさせていただいた。
はしょるが、僕が一番気になっていたことを質問する機会があったので、質問した。

具体的にはSaaSのマルチプル 10倍の妥当性について。

IPO時にマザーズであれば、PSR100倍ついている企業もあるし、平均を見ても30倍くらいは割に行くイメージだったので。
結論から言えば、マザーズの性質上、企業価値ボラティリティがでかいという話だった。
これは市場が果たす役割として、「個人投資家のホームラン狙い」によって起きている事象なので、ベンチマークにしないほうがよさそうということだった。

2022年に向けて株式市場の再編が起きるが、それは近年起きていた赤字上場やスタートアップの上場ゴールによってマザーズ市場の価値が下がっていることが理由だろう。

 

 

 

2月某日

 

はっきり言ってしまえば、僕はすでに「今の環境に慣れてしまった。」
というよりも、雇用者としての僕がひたすらに不自然で、むしろ今のほうが僕にとって自然なのかもしれない。
人間っていうのは割に簡単に環境に順応していくみたいで、面白い。

そして環境が変わっていけば、自分の考え方も自然に変わってくる。

この一ヶ月を経て一番驚いたことは、「法務局に書類を提出する」「法人携帯の契約のために最適なプロバイダーを探す」「労働局に提出するための書類を作成する」といったひとつひとつの仕事をはっきりいってしまえば「雇用者時代にはやりたくないと思える仕事」も、今の僕にとってはまるで新鮮で、楽しかったということだ。人によっては泥臭い仕事も、清潔な泥に感じられた。
僕にとって泥臭い仕事というのは「誰かがやりたくないといって押し付けているその事実」によって塗りたくられているものなのかもしれない。

 

 

2月某日


初めての給料を自分に対して支払った。税金関係、うまくできているか不安だ。

これからしばらくは会社の口座から自分の給料を自分で支払うことになる。憂鬱だけど、自分の給料を年に一回、自分で決めることができるという点で、楽しみでもある。そのためにも、気張っていきたい。


2年目の目標はもう少し自然ゆたかな環境に引っ越し、犬を飼うことだ。

 

 

 

最後になるけど、最初に触れたちょっとした反省点を書いておこうと思う。

法人登記は1年くらいは変更する予定のないところにやらないと、管轄外への本店移転に6万かかってしまうので、登記前にしっかり検討しておいたほうがよかった。着金を急いでえいやで(オーナーにはナイショで)賃貸の自宅にしてしまった。すぐ変えたけど。ばれないといいな・・・

 

あと、会社の名前、読み方と発音をもっと意識したほうがよかった。
公証人役場に行ったときに「プロールですか?」といわれたときに、「やばい!」と思った。
電話口だと「え、クロエ?」と聞かれる。「誰が財布つくんねや」ってつっこみたくなるが、仕方ない。誰もが間違えなくなるくらいのブランドクエリをこれから取るんやっていう気持ちで頑張る。

 

 

スケジュールにかんして、もう少し周囲の情報収集をしておくべきだった。営業開始と同時に着金をしているところも一部あるみたいで。
一旦スケジュールを巻けるように準備してるけど、相場感がわからないとやだな。
特化型の管理システムの資料請求をしたら営業電話がかかってきたので、片っ端から話をきいてみようと思う。

 

あとオフィス、最安で契約したけど、事業の性質考えて、もっといいところにすればよかった。幸いレンタルオフィスで、移転はすぐにできるので、JFCの融資がおりて、6月くらいに変えられたらいい。

 

 

とはいえ・・・何よりも、思っていたよりも楽しくやってる今の自分が好きだ。